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最低賃金の引き上げから企業が受ける影響

更新日:2026.09.11
  • 税理士
最低賃金の引き上げから企業が受ける影響

原材料価格やエネルギー価格が急上昇している中で、人件費がさらに大きくなることに、頭を悩ませている事業主の方も多いのではないでしょうか。

では、最低賃金の引き上げに対して、会社にはどのような対応が求められるのでしょうか。

今回は「給与額の見直し」「採用に関する方向性の見直し」など会社が受ける影響について詳しくお伝えします。


最低賃金改定が迫る中、企業が直視すべき「人件費アップ」のリアル

原材料やエネルギー価格の高騰が続く中、全国平均で31円引き上げとなるような大規模な最低賃金の改定は、多くの経営者にとって深刻な課題です。

「時給を数拾円引き上げるだけで収まるはず」と軽く捉えられがちですが、実際には人件費の直接的な増加にとどまらず、組織全体の給料バランスや採用方針にまで大きな波紋を広げます。企業が受けるインパクトの全体像を把握し、早期に適切な準備を進めることが求められます。

「契約書で合意済み」は無効!まずは給与計算の構造を洗出し

引き上げに対応する際、最初に直面するハードルが「現在の給与設定が違法状態になっていないか」の確認です。

ここで見落としがちなポイントが2点あります。

雇用契約書での合意があっても無効

たとえ従業員と合意のうえで雇用契約を結んでいたとしても、改正後の最低賃金額を下回っていれば法律上無効となります。罰金を科せられるリスクもあるため、強制的な見直しが必須です。

すべての手当が計算に含まれるわけではない

毎月支払っている支給額の合計だけで判断するのは危険です。精皆勤手当、通勤手当、家族手当など、最低賃金の計算から除外しなければならない手当が存在します。

表面上の額面ではなく、対象となる手当だけを抽出した実質的な時給換算を行い、基準を満たしているかを精密に計算する必要があります。

1人月5,000円の増額が及ぼす、組織全体の歪みとモチベーション低下

最低賃金の引き上げは、単に「最低ラインの底上げ」にとどまりません。

例えば、パートの時給を30円上げたと仮定します。フルタイム勤務のパート従業員の場合、一人につき1ヶ月でおよそ5,000円近く人件費が上昇します。人件費の増加分を価格転嫁できていない企業にとって、この固定費増は経営を大きく圧迫します。

さらに見落とせないのが、正社員との給与格差の縮小です。

  • パート従業員の時給だけが底上げされる
  • 責任の重い正社員との給与差が縮まる
  • 正社員側に「責任に見合った給与が払われていない」という不満が溜まる
  • 離職率の上昇や労働生産性の低下を招く

この悪循環を防ぐためには、パートの時給改定と同時に、成果を出している正社員の給与や評価制度も見直す視点が欠かせません。

手当の切り分けと組織全体のバランス調整という高いハードル

自社だけで最低賃金対応を完璧にこなそうとすると、以下のような実務上の壁にぶつかります。

  • 法的要件に基づく複雑な手当の計算:自社の給与体系の中で、どの項目が最低賃金の対象になり、どれが対象外なのかの正確な判定
  • 採用計画とコスト構造の再設計: 1人あたり月数千円単位で増える人件費を織り込んだ中長期的な人員配置の見直し
  • 全社的な賃金テーブルの再構築:正社員の不満を回避し、生産性を引き出すための給与バランスの調整

単なる「時給の足し算」ではなく、自社の財務状況と人事制度全体を俯瞰した調整が求められるため、社内リソースだけで対応を完結させるのは容易ではありません。

賃金改定を機に、収益構造と評価制度の最適化へ

最低賃金の引き上げは、一見するとコスト増という痛みを伴う変化ですが、見方を変えれば「自社の労働生産性や収益構造、評価制度を根本から健全化する機会」でもあります。

現在の給料設定に法的リスクがないか、正社員を含めた全体の賃金バランスが崩れていないか不安が残る場合は、社会保険労務士などの専門家にアドバイスを求めるのも有効な手段です。自社の状況に合わせた適切な設計を行うことで、法的リスクを回避しつつ、従業員が納得して働ける強い組織作りへとつなげることができます。

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この記事の監修者

柿迫税理士事務所 代表取締役 税理士

柿迫 宏則

岡山大学法学部法学研究科卒
28歳で税理士を目指して転職
岡山市内の税理士事務所、公認会計士事務所の勤務を経て2005年1月独立開業

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